⑤ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)

本要件を満たすためには次の1および2を満たすことが必要です。

  1. 介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。
    1. 経験に応じて昇給する仕組み
      • 「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
    2. 資格等に応じて昇給する仕組み
      • 介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
    3. 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
      • 「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。
  2. 1の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

上記の要件がキャリアパス要件Ⅰと似ていると言われますが、異なるものです。キャリアパス要件Ⅰは、職位・職責・職務内容等に 応じた任用要件と賃金体系を整備することを要件としていますが、昇給に関する内容を含めることまでは求めていません。一方、キャリアパス要件Ⅲにおいては、経験、資格又は評価に基づく昇給の仕組みを設けることを要件としています(Q&A問4-6)。

昇給の判定基準については、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることが必要です。また、判定の時期についても、明文化されていることが必要です(Q&A問4-9)。

なお、昇給の仕組みについては、非常勤職員を含め、当該事業所や法人に雇用される全ての介護職員が対象となり得るものである必要があります(Q&A問4-8)。

常時雇用する者の数が10人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により上記2の要件を満たすこととしても差し支えないとされています。

また、令和6年度に限り、処遇改善計画書において令和7年3月末までに上記一の仕組みの整備を行うことを誓約すれば、令和6年度当初からキャリアパス要件Ⅲを満たすものとして取り扱っても差し支えないとされています。ただし、必ず令和7年3月末までに当該仕組みの整備を行い、実績報告書においてその旨を報告することが必要です。

上記①から⑤までを満たすことで、処遇改善加算Ⅲを受けることができます。

⑥ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)

経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が年額440万円以上であることが必要です(新加算等による賃金改善以前の賃金が年額440万円以上である者を除くきます。)。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合はこの限りではないとされています。

  • 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
  • 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合

ここで「経験・技能のある介護職員」とは、介護福祉士であって、経験・技能を有する介護職員と認められる者をいいます。具体的には、介護福祉士の資格を有するとともに、所属する法人等における勤続年数 10年以上の介護職員を基本としつつ、他の法人における経験や、職員の業務や技能等を踏まえ、各事業者の裁量で設定するものです(R6.3.15基本通達)。

440万円以上の 処遇改善となる者の処遇改善後の賃金額については、手当等を含めて判断することとなります。この440万円に、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含めることはできません(Q&A問5-2)。

なお、令和6年度中は、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上の職員の代わりに、新加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たすこととしても差し支えないとされています。

⑦ キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)

本要件では、サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していることが必要です。具体的には、新加算等を算定する事業所または併設する本体事業所においてサービス類型ごとにサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算又は日常生活継続支援加算の各区分の届出を行っていることが必要です(通達の別紙1の表4)。

⑧職場環境要件

令和7年度以降に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合は、次表に掲げる処遇改善の取組を実施することが必要です。

その際、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、上表の「入職促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む心身の健康管理」、および「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに2以上の取組を実施し、新加算ⅢまたはⅣを算定する場合は、上記の区分ごとに1以上を実施することが必要です。

また、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、同表中「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上の取組(うち⑰または⑱は必須)を実施し、新加算ⅢまたはⅣを算定する場合は「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち2つ以上の取組を実施することが必要です。

新加算等を前年度から継続して算定する場合、 職場環境等要件を満たすための取組については 従前の取組を継続していればよく、当該年度において新規の取組を行う必要まではありません(Q&A問7-1)。

ただし、生産性向上推進体制加算を算定している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとし、1法人あたり1の施設等のみを運営するような法人等の小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとされます。

また、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表することが必要です。具体的には、介護サービスの情報公表制度を活用し、新加算の算定状況を報告するとともに、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目およびその具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に記載することとされています。当該制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページを活用する等、外部から見える形で公表します。

ところで、上記の職場環境等要件の見直しについては、令和6年度中は適用が猶予されます。したがって、令和6年度中の職場環境等要件としては、次表に掲げる職場環境等の改善に係る取組を実施し、その内容を全ての介護職員に周知すれば要件をみたしたことになります。

その際、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、上表の「入職促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む心身の健康管理」、「生産性の向上のための業務改善の取組」及び「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに1以上の取組を実施し、新加算Ⅲ又はⅣを算定する場合は、上表の取組のうち1以上を実施すればよいこととされています。

また、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表することが必要です。

令和6年度に新加算等を算定しようとする介護サービス事業者等は、それぞれの期日までに以下の届出を行うことが必要です。

① 体制等状況一覧表等の届出(体制届出)

新加算等の算定に当たっては、介護サービス事業所・施設等ごとに、介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等の必要書類一式の提出を行うことが必要です。その際、居宅系サービスの場合は算定を開始する月の前月15日、施設系サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護、(地域密着型)特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型介護老人福祉施設を含む。以下同じ。)の場合は当月1日までに、当該介護サービス事業所等の所在する都道府県知事等に提出するものとされています。

令和6年6月以降の新加算の算定に係る体制届出については、他の加算と同様に、居宅系サービスの場合は令和6年5月15日、施設系サービスの場合は令和6年6月1日を届出期日とされています。

また、新加算等の算定に当たっては、介護職員等処遇改善計画書、介護職員処遇改善計画書、介護職員等特定処遇改善計画書及び介護職員等ベースアップ等支援計画書を、別紙様式2-1、別紙様式2-2、別紙様式2-3および別紙様式2-4に定める様式により作成し、当該事業年度において初めて新加算等を算定する月の前々月の末日までに提出し、根拠資料と併せて2年間保存しなければなりません。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

介護職員の処遇改善(厚生労働省HP)