東京都のカスハラガイドラインの概要②
前回に引き続き、東京都カスタマーハラスメント防止条例のガイドラインについてみていきましょう。
6.相談を理由とした不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め周知
カスタマー・ハラスメントの相談をもって不利益を受けない旨を明確にした上で就業者に周知することとされています。たとえば、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、就業者がカスタマー・ハラスメントの相談等を理由として、解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、就業者に周知・啓発すること、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報啓発のための資料等に、就業者がカスタマー・ハラスメントの相談等を理由として、解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、就業者に配布することなどが考えられます。
7.現場での初期対応の方法や手順の作成
カスタマー・ハラスメントが発生した際を想定し、現場での初期対応の方法、手順を作成しておくこととされています。カスタマー・ハラスメントが発生した際の対応方針は、事業者の業種、業態、企業文化、顧客等との関係などによって異なると考えられるため、各事業者の状況に合わせた対応例を準備しておくことが重要です。対応例を作成する際は、顧客等に対して複数名で対応する、一次対応者に代わって現場監督者が対応するなど、就業者の安全に配慮した内容とする必要があります。

8.内部手続(報告・相談、指示・助言)の方法や手順の作成
本社・本部との連携が必要な場合、内部手続(報告・相談、指示・助言)の方法、手順を作成しておくこととされています。たとえば、カスタマサービス部門等の本社組織が中心となって対策推進チームを設け、基本方針や対応方法・手順の作成、教育や周知、再発防止策の検討・実施を取りまとめるという体制を取ることが考えられます。
たとえば、中規模・中小規模の企業の場合(従業員6~100人)の内部手続きの例を示すと、カスタマー・ハラスメント対策推進 ⇒ 本部(経営者、人事部門責任者など) 相談対応者・現場監督者 ⇒ 就業者の上司(店舗におけるマネージャーなど)とすることなどが考えられます。

9.事実関係の正確な確認と事案への対応
カスタマー・ハラスメントと思われる事案が発生した場合、事実関係の正確な確認と事案への対応を行うこととされています。たとえば、建物や敷地内で顧客等による著しい迷惑行為の事実が認められた場合、施設管理権(民法第206条)に基づき、顧客等に対して施設外への退去を命じること、出入り禁止となった顧客等が再び来訪した場合、同様に施設外への退去を命じること、顧客等が退去に応じない場合、不退去罪(刑法第130条後段)が成立し得る旨を伝えた上で、弁護士や警察と連携を取りながら、適切な対応を行うことなどが考えられます。
また、対応のポイントとして、顧客等による著しい迷惑行為により、事業者に何らかの損害が発生した場合、事業者から顧客等に対して損害賠償請求をする可能性がある旨、あらかじめ明示しておくことが望ましいとされています。
10.就業者の安全の確保
カスタマー・ハラスメントを受けた就業者の安全を確保することとされています。たとえば、カスタマーハラスメント行為が行われた場合、現場監督者が顧客対応を代わり、就業者を顧客等から引き離すこと、個別の事案に応じて責任ある立場の者から行為者へ帰ってもらう旨を伝えること、また、状況に応じて、顧客等に対して、出入り禁止や商品やサービスの提供を停止する旨を通告することなどが考えられます。
11.就業者の精神面及び身体面への配慮
カスタマー・ハラスメントを受けた就業者の精神面及び身体面のケアなどに取り組むこととされています。たとえば、被害を受けた就業者にメンタルヘルス不調の兆候がある場合、産業医や産業カウンセラー、臨床心理士等の専門家に相談対応を依頼するほか、専門の医療機関への受診を促すことなどが考えられます。
12.就業者への教育・研修等
顧客等からの迷惑行為や悪質なクレーム等への具体的な対応について、就業者への教育や研修等を実施することとされています。研修は可能な限り就業者全員が受講できるようにし、定期的に実施することが望ましいとされています。特に経営層に対しては、カスタマー・ハラスメントが事業に与える影響や優先順位を判断した上での対応が求められることについて、外部講師を招いた研修等を通じて意識改革を図るなど、積極的な取組を促すことが有効とされています。
13.カスタマー・ハラスメントの再発防止に向けた取組
カスタマー・ハラスメントの再発防止のため、定期的な取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行うこととされています。実際の事例を活用し、新たな防止策の検討、経営者からのトップメッセージ、顧客等からのクレーム対応マニュアル、研修の見直し・改善等に役立てるほか、衛生委員会の活用などもかんがえられます。
このように、不利益取扱の禁止のような他のハラスメントと類似の措置もある一方で、安全の確保など特有の対策も見られます。自社でそれぞれの取組みについてどのような内容が効果的か、検討してみるとよいでしょう。



