労働保険・社会保険の未加入事業所への行政の動き
近年、厚生労働省では、労働保険(労災保険・雇用保険)および社会保険(健康保険・厚生年金保険)の未加入事業への指導を強化しています。
特に建設業については、平成24年に、国土交通省と厚生労働省が連携して、今後5年を目途に建設業許可業者の加入率100%を目指すことを目標とする取組みを行うことが公表され、実施されています。たとえば、建設業の許可 ・更新時に健康保険等の加入状況を確認し、 文書による加入指導、厚生労働省の担当部局への通報が行われています。
また、平成27年からは、雇用保険適用情報、法人登記簿情報等による加入指導に加えて、国税庁からの情報提供により稼働実態が確認された適用調査対象事業所について、3年間で集中的に加入指導等に取り組むとされています。
このほかにもハローワークの求人の申込にあたって社会保険の加入状況の確認が行われるなど、社会保険未加入事業所は、行政サービスを利用しにくい状況も生じています。
社会保険の基礎知識
ここでは、会社に関係する社会保険の概要をみてみましょう。なお、介護保険については省略しています。
社会保険ってなに?
会社として加入する社会保険には次のようなものがあります。
労 働 保 険 |
労災保険 | 労働者が業務上の事由および通勤によって負傷、疾病または死亡した場合に、被災労働者や遺族に対して保険給付が行われる制度です。 |
雇用保険 | 労働者が失業した場合や育児休業など雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、保険給付が行われる制度です。なお、雇用に関連する助成金は、雇用保険料の一部を原資としています。 | |
社 会 保 険 |
健康保険 | 労働者およびその家族(被扶養者)が、病気や怪我をしたときや出産、死亡したときなどに、保険給付が行われます。 |
厚生年金保険 | 労働者の老齢、障害または死亡について、本人やその遺族に保険給付が行われる制度です。 |
このように「社会保険」は「労働保険」と「社会保険」に分けることができます。ここで、「社会保険」という概念の中に(同じ名前の)「社会保険」が入っているのに注意してください。ここは、ややこしいところですので、以下で説明します。
結論をいうと、「社会保険」と一口に言っても、「広い意味の社会保険」と「狭い意味の社会保険」があるということです。「広い意味の社会保険」は、国民年金保険や国民健康保険なども含むものですが、会社に関係するものとしては労災保険、雇用保険、健康保険および厚生年金保険があります。
一方、「狭い意味の社会保険」は、健康保険および厚生年金保険を指します。現場感覚でいえば、「社会保険」という場合はこちらを指していることが多いと思います。このように「社会保険」といっても、総称として「社会保険」という場合と、健康保険および厚生年金保険を「社会保険」という場合があるので留意してください。
どんなときに入らなければならないの?
会社の社会保険の加入については、「労働保険(労災保険と雇用保険)」と「社会保険(健康保険と厚生年金保険。「狭い意味の社会保険」)」の2つを区分するとわかりやすいでしょう。
まず、労働保険(労災保険と雇用保険)については、労働者を使用・雇用する事業が適用事業所となります。したがって、パートやアルバイトでも労働者を一人でも雇っていれば、原則として、労働保険の適用事業となり、加入の手続きが必要となります。
一方、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の場合、少し複雑なところがあります。
まず、法人の事業所については、原則として強制適用となります。したがって、株式会社はもちろん、特定非営利活動法人、医療法人社団、社会福祉法人、合同会社などの事業所は、原則として社会保険に加入しなければなりません。
しかし、個人事業主の場合には、強制適用とはならないケースが2つあります。それは、次のものです。
- 農林水産業、サービス業の中の一定の業種の個人事業主
- 1以外の一般の事業所で常時5人未満の従業員を使用する個人事業主
これらの場合は任意適用とされ、事業主が希望する場合に一定の要件をみたすことで社会保険に加入することができます。これをまとめると、次表のようになります。
このように、労働保険と社会保険では、適用範囲が若干異なります。たとえば、パートやアルバイトも含めて労働者のいない法人の事業所については、労働保険に加入する義務はありませんが、社会保険では通常代表取締役が被保険者となるため、社会保険には加入する義務があることになります。
保険料はどのくらいになるの?
保険料の計算方法は、各保険ごとに異なりますが、おおまかには次のようになります。なお、健康保険・厚生年金保険で使用する「標準報酬月額」とは、給与を標準報酬月額表に当てはめて決定されるもので、原則として毎年4月から6月の給与を元に改定されます。
種類 | 保険料の計算方法 | 会社負担割合 | |
---|---|---|---|
労 働 保 険 |
労災保険 | 賃金額×保険料率(業種により異なる) | 全額会社負担 |
雇用保険 | 1.35% (建設業は1.65%) |
0.85% (建設業は1.05%) |
|
社 会 保 険 |
健康保険 | 標準報酬月額×9.97% (協会けんぽで千葉県の場合) |
半額負担 |
厚生年金保険 | 標準報酬月額×17.12% | 半額負担 |
保険料の支払は、労働保険については、原則毎年1回(一定の額を超える場合は3回まで延納ができます)、社会保険については、毎月納付します。
新規適用の料金
当事務所へ労働保険・社会保険の加入(新規適用)手続きをご依頼いただいた場合の料金は以下のようになりますなお、同時に労務顧問プランのご契約をされる場合は、割引いたします。
当事務所では、添付資料となる「法人登記簿謄本」を無料取得代行いたします。近くに法務局がないお客様に大変好評です。
■労働保険(労災保険・雇用保険)の新規適用
27,000円(基本料金)+被保険者数×1,000円 |
■社会保険(健康保険・厚生年金保険)の新規適用
27,000円(基本料金)+被保険者数×1,000円 |
ご依頼の前に、従業員のうち誰が加入しなければならないのか、全体の保険料はどのくらいになるかといったご相談も無料で対応いたします。