前回に引き続きストレスチェック制度関係Q&A(令和3年2月改訂版)のうち、実務上重要と思われるものについてみていくことにしましょう。

Q4-1 高ストレス者の選定基準について具体的な数値は示すのでしょうか。また、事業場における選定基準の設定の仕方として上位○%が入るように、といった目安は示すのでしょうか。
A ストレスチェック制度実施マニュアルに、職業性ストレス簡易調査票を使用した20万人のデータから、57項目及びその簡略版23項目について、高ストレス者が10%となるようにする場合の具体的な数値基準の例を示しています。ただし、各事業場における数値基準は衛生委員会等で調査審議の上で事業場毎に決めていただく必要があり、一律に目安を示すものではありません。

高ストレス者の選定は、「心身の自覚症状に関する項目の評価点数の合計が高い者」または「心身の自覚症状に関する項目の評価点数の合計が一定以上であって、心理的な負担の原因に関する項目及び他の労働者による支援に関する項目の評価点数の合計が著しく高い者」の要件を満たす者とされていますが、具体的な基準は法定されていないため、衛生委員会等で調査審議のうえで事業場や職種ごとに決めることができます。ただし、一般的には、厚生労働省が示している「職業性ストレス簡易調査票」を使用し、高ストレス者の判定はストレスチェック制度実施マニュアルに従うことが多いでしょう。

Q5-1 事業者が行う受検勧奨について、安全配慮義務の観点からどのくらいの頻度・程度で受検勧奨するのが妥当なのでしょうか。
A 受検勧奨の妥当な程度はそれぞれの企業の状況によっても異なると考えられます。その方法、頻度などについては、衛生委員会等で調査審議をしていただいて決めていただきたいと思います。ただし、例えば就業規則で受検を義務付け、受検しない労働者に懲戒処分を行うような、受検を強要するようなことは行ってはいけません。

ストレスチェック制度の受験については、従業員の受検義務はありませんので、未受検者に対して懲戒処分を行うことなどはできません。なお、ストレスチェックの受検の有無の情報については、個人情報という取扱いにはなりませんので、事業者に提供することは可能です(Q&A5-3)。

Q6-1 ストレスチェックを外部委託し、事業所の産業医は個々人の結果を把握するために、共同実施者となる予定ですが、どの程度関与していれば共同実施者といえるのでしょうか。
A 少なくとも、事業者が調査票や高ストレス者選定基準を決めるに当たって意見を述べること、ストレスチェックの結果に基づく個々人の面接指導の要否を確認することが必要です

ストレスチェックを外部委託することは少なくありません。一方、実施者として医師、保健師等が必要となります。そこで、外部委託業者と医師等(産業医)との業務分担が問題となります。この点について、産業医が実施者として最低限するべきこととして、「事業者が調査票や高ストレス者選定基準を決めるに当たって意見を述べること、ストレスチェックの結果に基づく個々人の面接指導の要否を確認することが」が必要とされました。

Q7-2 外部機関に委託して実施する場合、ストレスチェック結果は労働者の自宅あてに送付することになるのでしょうか。
A 自宅に送付する方法もありますが、個人ごとに、容易に内容を見られない形で封をしたものを事業場に送付して、それを事業場内で各労働者に配布することも可能です。

外部機関に委託する場合であっても、「容易に内容を見られない形」であれば、結果を事業場に送付することも可能です。

Q8-3 高ストレス者について事業者への結果提供の同意がなく、実施者のみが結果を保有している場合に、面接指導以外の保健指導等を行わなければならないのでしょうか。
A 法的には保健指導等の実施が義務づけられているものではありませんが、高ストレスの状態で放置されないように相談対応等を行うことが望ましいと考えています。

本人の同意により面接指導が必要であるという評価結果を事業者が把握している労働者に対しては、必要に応じて、事業者が申出を勧奨することも可能ですが、事業者に結果が提供されない場合は、このような対応も考えられます。

Q9-1 ストレスチェック実施を外部機関に委託した場合、本人への面接指導の勧奨は外部機関からなのか、嘱託の産業医からなのかどちらなのでしょうか。
A 面接指導の勧奨は、ストレスチェックの実施者が行うことが望ましいです。このため、嘱託産業医がストレスチェックの共同実施者でない場合は、外部機関の実施者が本人に勧奨することになりますが、嘱託産業医が共同実施者である場合は、嘱託産業医が勧奨することが望ましいです。具体的な勧奨の方法等については、衛生委員会等で調査審議の上で事業場ごとに決めていただきたいと思います。

嘱託産業医を共同実施者でない場合には外部機関が面接指導の勧奨を行うことになりますので、外部委託をする場合は、留意してください。

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参考リンク

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)