労災保険制度見直しに関する建議

厚生労働省の労働政策審議会が、厚生労働大臣に対し、労災保険制度の見直しについて建議を行いました。そこで、その内容についてみていくことにしましょう。

本報告は、以下の3つの構成になっています。

  1. 適用関係
  2. 給付関係
  3. 徴収関係

このうち適用関係については、以下の3つの内容が盛り込まれました。

第1に、暫定任意適用事業は廃止し、労災保険法を順次、強制適用することが適当とされました。ただし、強制適用に当たっては、零細な事業主の事務負担の軽減等の対応を農林水産省と連携しつつ検討するとともに、円滑な施行に必要な期間を設けられる見込みです。

第2に、特別加入団体の保険関係の承認や消滅の要件を法令上に明記することが適当とされました。また、保険関係の消滅に当たっては、段階的な手続を設けるとともに、消滅させる時期に配慮することが適当とされました。労働基準法が適用されておらず、現在、労災保険法の特別加入対象でない事業等について、特別加入の対象を拡大し、労災保険法を適用することについて随時検討することが適当とされました。

第3に、災害補償責任も含め労働基準法が家事使用人に適用されることになった場合には、労災保険法を強制適用することが適当とされました。強制適用に当たっては、保険関係成立の届出や保険料の納付のような運用面の課題について、対応を検討することが適当とされました。

次に、給付関係では次の4つが盛り込まれました。

第1に、遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差は解消することが適当とされました。解消するに当たっては、夫にのみ課せられた支給要件を撤廃することが適当とされています。また、特別加算を廃止し、遺族1人の場合における給付基礎日額を175日分とすることが適当とされました。

現行のルール

第2に、労災保険給付請求権のうち、消滅時効期間が2年である給付について、発症後の迅速な保険給付請求が困難な場合があると考えられる疾病を原因として請求する場合には、消滅時効期間を5年に延長することとし、まずは、脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病等について、対象とすることが適当とされました。また、労災保険制度の不知や手続の失念等により時効期間を徒過して請求された事案も存在することから、周知を工夫することや運用を改善することが適当とされました。

第3に、社会復帰促進等事業として実施されている給付について、処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当とされました。

第4に、有害業務に従事した最後の事業場を離職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額の算定に当たっては、疾病の発症時の賃金が、疾病発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日以前3か月間の賃金を基礎として現行の取扱いに則り算定した平均賃金より高くなる場合は、発症時賃金を用いることが適当とされました。

次に徴収関係については、以下の2つが盛り込まれました。

第1に、メリット制を存続させ適切に運用することが適当であるが、継続的にその効果等の検証を行うことが適当とされました。ただし、メリット制が、労災かくしおよび労災保険給付を受給した労働者等に対する事業主による報復行為や不利益取扱いに繋がるといった懸念について、その実態を把握し、その結果に基づき必要な検討を行うことが適当とされています。

第2に、事業主に早期の災害防止努力を促す等の観点から、労災保険給付の支給決定(不支給決定)の事実を、同一災害に対する給付種別ごとの初回に限り、労働保険の年度更新手続を電子申請で行っている事業主(原則として、当該災害に係る災害防止措置を講ずべきと考えられる事業主のみ)に対して情報提供することが適当とされました。このとき提供される情報は、支給決定等の有無、処分決定年月日、処分者名、処分名及び被災労働者名となる見込みです。
また、事業主が自ら負担する保険料が増減した理由を把握できるようにする観点から、メリット制の適用を受け、労働保険の年度更新手続を電子申請で行っている事業主に対して、メリット収支率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報を提供することが適当とされました。提供する情報は、当該事業場のメリット収支率に反映された保険給付等に係る当該メリット算入期間における保険給付、特別支給金及び特別遺族給付金の合計金額となる見込みです。
さらに、実態把握の結果に基づき、事業主に対する支給決定等に関する情報及びメリット基礎情報の提供の在り方について、必要な検討を行うことが適当とされました。

このように今回の改正内容は多岐にわたるところですが、目玉になるのは、遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差の解消といえるでしょう。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

労働政策審議会建議「労災保険制度の見直しについて」を公表します(厚生労働省HP)

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