配偶者手当の見直しを行う場合の手順と留意点

厚生労働省は、配偶者を対象とした手当を含む賃金制度の見直しを実施・検討した企業の事例や、数多くの中小企業の相談に応じている東京商工会議所の専門相談員に対し実施したヒアリング結果を参考に、見直しを行う場合の留意点および企業事例等をパンフレットにまとめて公開しています。

そこで、今回はパンフレットに基づいて、見直しを行う場合の留意点についてみていきましょう。

初めに手順としては、前回も掲載した次図が参考になります。

ステップ1は下記の「参考リンク」に保存されている実務資料編を参考に検討してください。

ステップ2は、従業員のニーズをふまえた案の策定です。配偶者手当の見直しを検討するに当たり、従業員の満足度調査、各部門等からのヒアリング結果、労働組合を通じた情報収集等によって従業員のニーズを把握する等、従業員の納得性を高める取組が行われています。

具体的な従業員ニーズ等の情報収集方法としては、日頃から職場の実態について直接従業員に確認する、ヒアリングを実施するなど会社側が直接行う方法や、労働組合との団体交渉や協議の場を通じて、労働組合が収集した組合員の声を収集するなど労働組合を通じて収集する方法などがあります。また、手当等の賃金制度の変更が想定される社員を集めて、制度設計に向けた仕事の洗い出しを行うなど従業員を参画させることも考えられます。特に中小企業では、一方的なトップダウンによる制度の施行は納得感が得られにくいため、社員一人一人が参画し、意識を高く持つことで、制度の納得性に繋げ、ひいてはモチベーションの向上や定着率の向上に繋げることができます。

ステップ3では、2で収集した情報に基づき見直し案を検討、決定します。このとき常日頃より労使で意見交換を行い、あるいは制度設計の段階から労働組合や従業員へ丁寧に説明を行って合意することで円滑な見直しが行われています。たとえば、制度設計段階からいくつかの案をもって労働組合へ提案。初期の段階から制度の趣旨を伝え、早い段階からコンセプトの共感に繋げることなどが考えられます。従業員の多数ないし代表としての労働組合との間の合意は、労働契約法第10条本文に基づく就業規則の変更に係る合理性判断に際しての重要な考慮要素となりますので、特に大切にしましょう。

また、制度の変更に当たっては、賃金原資の総額が維持されるよう制度設計がなされるのが一般的ですが、賃金原資の総額の維持は、労働契約法第10条本文に基づく就業規則の変更に係る合理性判断に際しての重要な考慮要素となるとされています。

労働契約法10条の内容は次の通りです。すなわち、使用者は、原則として、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者に不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することができません。ただし、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させたこと、および就業規則の変更が合理的なものであることという要件を満たした場合には、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、労働契約の内容である労働条件が当該変更後の就業規則に定めるところによるという法的効果が生じることとされています(同法第10条)。

以上の点をふまえると、見直し内容としては、次のようなものが考えられます。

  1. 「配偶者手当」を廃止し、基本給等へ組み入れ、他の家族手当の増額、新手当の創設等
    • 家族手当を廃止し、または配偶者を対象から除外し、相当部分を基本給等に組み入れ
    • 配偶者に対する手当を廃止し、子どもや障害を持つ家族等に対する手当を増額
    • 家族手当や住宅手当を廃止し、基礎能力に応じて支給する手当を創設
  2. 「配偶者手当」を縮小
    • 配偶者に手厚い支給内容を、扶養家族1人あたり同額に変更(配偶者に対する手当を減額し、子ども等に対する手当を増額)
    • 配偶者に対する手当を、一定の年齢(3歳の3月末、小学校卒業)までの子どもがいる場合のみに限定して支給
    • 管理職及び総合職に対する扶養手当を廃止し、実力、成果、貢献に応じて配分
  3. 「配偶者手当」を存続
    • 他の手当は改廃したものの、生活保障の観点から家族手当は存続

なお、不利益を受ける労働者を対象として、段階的に支給額を減額していくなどの経過措置が設けられている例が多くあります。必要な経過措置は、労働契約法第10条本文に基づく就業規則の変更に係る合理性判断に際しての重要な考慮要素となるとされています。

  • 見直しの内容
    • 経過措置を長めに設けることで、手当が減少した従業員にも、概ね受け入れられる制度とする。
    • 制度見直し後に資格取得や昇格等により賃金額が上昇する可能性を勘案して、資格取得に通常必要となる期間等適切な期間を経過措置として設定する。
    • 半年は旧制度での支給額を維持し、その後、段階的に減額とする。
    • 旧制度との差額を賞与時に補填する。
    • 経過措置期間については、企業事例では、2年から3年程度が多いが、1年のものもあれば5年のものもあった。

最後のステップ4では、従業員間の納得性を高めるため、制度変更決定後の新制度について従業員に対し丁寧な説明を行います。たとえば、職場ごとに従業員への説明会を実施する方法やイントラネットに制度概要を掲載し、さらに質疑応答は目安箱のようなものを設定し回答するなどが考えられます。小規模企業では、全従業員による定例会議の場で制度変更の趣旨等について丁寧に説明し、従業員の理解を深めることに時間をかけることも有効です。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

企業の配偶者手当の在り方の検討(厚生労働省HP)

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