カスハラ指針案要綱①

厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会で「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針案要綱」が答申されました。本指針は、労働施策総合推進法33条1項から3項までに規定する事業主が職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(顧客等)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、当該労働者の就業環境が害されること(職場におけるカスタマーハラスメント)のないよう雇用管理上講ずべき措置等について、同条4項の規定に基づき事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたものです。

職場におけるカスタマーハラスメントは、「職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」をいうとされています。

ここで「職場」とは、「労働者が業務を遂行する場所」とされており、「取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、・・・これに該当する」とされています。

また、「顧客等」とは、「顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある潜在的な顧客も含む。)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む。)その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者を指」すものとされており、事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者だけでなく、問い合わせをする者、取引先の担当者、施設・サービスの利用者およびその家族、施設の近隣住民までも含むものです。このように「顧客等」は幅広い概念となっており、たとえば保育所の近隣住民が子どもの声がうるさいなどして、「社会通念上許容される範囲を超え」て大きな怒鳴り声をあげるような場合も、これに該当することになります。

なお、顧客等からの苦情の全てが職場におけるカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらないとされています。

また、障害者から労働者に対して、障害者差別解消法で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらず、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないことに留意が必要です。
加えて、職場におけるカスタマーハラスメントには、店舗及び施設等において対面で行われるもののみならず、電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれるものとされています。

前述のように、カスタマーハラスメントとは、「社会通念上許容される範囲を超えた」言動とされています。この判断に当たっては、様々な要素を総合的に考慮するとともに、「言動の内容」および「手段や態様」に着目し、総合的に判断することが適当であり、「言動の内容」、「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でもこれに該当し得ることに留意が必要とされています。加えて、社会通念上許容される範囲を超えるかどうかの判断に当たっては、事業主又は労働者の側の不適切な対応が当該言動の原因や背景となっている場合もあることにも留意する必要があります。

社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型的な例としては、以下のものがありますが、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ます。

  • 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
    • そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
    • 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
    • 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
    • 不当な損害賠償要求
  • 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
    • 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
    • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
    • 威圧的な言動
    • 継続的、執拗な言動
    • 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)

「労働者の就業環境が害される」とは、「就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す」とされています。この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とされています。なお、当該言動の頻度や継続性は考慮するが、強い身体的または精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、一回の言動でも、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じ、就業環境を害する場合があり得ます。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

第89回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(厚生労働省HP)

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