今回は、令和6年度診療報酬改定における「 賃上げ・基本料等の引き上げ」についてみていきましょう。
はじめに、厚生労働省の資料より、令和6年度及び令和7年度における賃上げのイメージを引用します。

この図のように、①医療機関や事業所の過去の実績をベースにしつつ、更に②今般の報酬改定による上乗せの活用③賃上げ促進税制の活用により、令和6年度に+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実施し、定期昇給なども合わせて、昨年を超える賃上げの実現を目指すこととされました。
賃上げに係る「評価料」は、大きく「ベースアップ評価料」と「初再診料、入院基本料等の引き上げ」により行われます。
このうち「ベースアップ評価料」とは、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者を除く。)について賃上げを実施していくための評価をいいます。
ベースアップ評価料は「① 外来・在宅医療の患者に係る評価、訪問看護ステーションの利用者に係る評価」と「②入院患者に係る評価」から成ります。このうち①については、提供するサービスの種類ごとに、外来・在宅ベースアップ評価料(I)、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(I)、訪問看護ベースアップ評価料(I)があります。本評価料を受けるためには届け出が必要とされており、初再診料等に上乗せ(区分は設けない)されるものです。
②は病院、有床診療所に限った評価で、入院ベースアップ評価料として、必要な評価の区分(165区分)を計算し、届出を行った施設について、入院料等に評価が上乗せされます。
なお、無床診療所、訪問看護ステーションでは②がないため、①による対象職員の賃上げだけでは、一定の水準(給与総額の1.2%増)に達しない場合が見込まれます。そこで、賃金増率が低い場合の①への上乗せ評価として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ) 」が設定され、一定の水準(対象職員の給与総額の1.2%)に達するため、評価の区分(8区分)を計算し、届出を行った施設について、①の評価へ上乗せが行われます。
外来・在宅ベースアップ評価料(I)は、外来医療または在宅医療を実施している医療機関(医科)において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価で、初診時に6点、再診時に2点とされています。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の施設要件としては、外来医療または在宅医療を実施している保険医療機関であること、主として医療に従事する一定の職員(医師及び歯科医師を除く。)であることなどがあります。なお、医療に従事する一定の職員には、専ら事務作業(医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)を行うものは含まれません。
当該評価料を算定する場合は、令和6年度および令和7年度において対象職員の賃金(役員報酬を除く。)の改善(定期昇給によるものを除く。)を実施し、賃金の改善について、当該評価料は、対象職員のベア等およびそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いることとされています。
なお、令和6年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して2.5%以上引き上げ、令和7年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して4.5%以上引き上げた場合については、40歳未満の勤務医及び勤務歯科医並びに事務職員等の当該保険医療機関に勤務する職員の賃金(役員報酬を除く。)の改善(定期昇給によるものを除く。)を実績に含めることができることとされています。そして、この評価を受けるためには、「賃金改善計画書」および「賃金改善実績報告書」を作成し、定期的に地方厚生(支)局長に報告することが必要です。
これに対して、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は、外来医療または在宅医療を実施し、入院医療を実施していない診療所であって、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金のさらなる改善を必要とする医療機関において、賃金の改善を実施している場合の評価料として新設されるものです。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)には8段階があり、初診または訪問診療を行った場合については1日につき1回に限り算定でき、再診時についても1日につき1回に限り算定できるものとされています。このほかにも算定要件・施設要件が定められていますので、以下の参考リンクの資料も参考にしてください。
ベースアップ評価料は細かい内容や意図がよくわからない仕組みもありますが、まずは全体像を把握してから、細かい内容を調べることが重要です。
