今日の記事、ざっくり言うと…

  • 日本年金機構のHPなどで社会保険料がかからないとされる「大入袋」にとはなにか、解説する

今回は、昨年末から何度か質問を受けた、日本年金機構のHPや「算定基礎届・月額変更届記載の手引き」などで社会保険料がかからないとされる「大入袋」にとは何なのか、解説したいと思います。なお、この点については、日本年金機構HP掲載の「主な疑義照会と回答について」(区分:被保険者資格取得届、整理番号:8)に詳しいので、以下では、これを元にします。

そもそも、社会保険料の対象となるかどうかは、法令上の「報酬」または「賞与」に当たるかどうかということです。

ここで、 「報酬」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称で あるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものはこの限りではない」とされており、「賞与」とは、「賃金、給料、 俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労 働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに 受けるものをいう。」とされています。

したがって、「労働の対償として受けるもの」であれば、報酬または賞与に当たること、ただし、例外として「臨時に受けるもの」であれば、報酬には含めないということになります。つまり、大入袋(と呼ばれる金銭)が「労働の対償」に当たるかどうか、また、「臨時に受けるもの」であるかどうかを検討することなります。

まず、「臨時に受けるもの」とは、「被保険者が常態として受ける報酬以外のもので狭義に解するものとすること」とされており、その判断は、支給事由の発生、原因が不確定なもので あり、極めて狭義に解するものとすることとされていますので、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかなどを検討することになります。

次に、「労働の対償」とは、被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、①過去の労働と将来の労働とを含めた 労働の対価 、②事業所に在籍することにより事業主(事業所)より受ける実質的収入とされています。ただし、事業主が恩恵的に支給する見舞金は通常の報酬ではないとされ、結婚祝金や慶弔費なども「報酬」や「賞与」とはなりません。

以上を踏まえて、大入袋と呼ばれる金銭の実質について、考えることになります。

まず、大入袋が臨時的であるかどうかを検討します。臨時的であれば、金額の大小に関係なく、報酬としない取扱いが妥当となります。

次に、臨時的でないとすれば、報酬又は賞与となるのか判断することになりますが、事業主が恩恵的に支給するものは報酬又は賞与から除かれますので、「恩恵的かどうか」を検討します。その判断は、社会通念上での判断となります。なお、機構HP記載の事例においては、「賃金台帳に記載があること、金額が 1 万円であること、これに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、本来の大入袋のもつ性質とは異にし、恩恵的ではないと判断するのが妥当」とされています。

参考リンク

主な疑義照会と回答について(日本年金機構HP)

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