シリーズ「労務管理の要点」第2回:雇入れ時の実務②


3.入社時の提出書類

従業員を新たに雇い入れた場合には、社会保険の手続きや、毎月の給与にかかる所得税の計算等のために、従業員に一定の書類の提出を求めます。たとえば正社員の場合には、次のような書類が必要になります。なお、パートタイマーの場合には、社会保険に加入できる場合とそうでない場合がありますので、必要なもののみ提出を求めるようにします。

  1. 年金手帳⇒健康保険・厚生年金保険の加入手続きに使用
  2. 雇用保険被保険者証⇒雇用保険の加入手続きに使用
  3. 扶養控除等(異動)申告書⇒源泉所得税の計算に使用
  4. 給与所得の源泉徴収票⇒年末調整に使用。12月になってから「紛失した」などとならないように、入社時に回収しておくとよいでしょう。
  5. マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカード⇒雇用保険資格取得届や源泉徴収票作成に使用

これらの書類は、雇用にあたって最低限必要な資料です。さらに、会社によっては次のような資料の提出を求めることがあります。

  • 卒業見込証明書(新卒の者を雇い入れる場合)
  • 住民票記載事項証明書⇒住民票の写し(コピーという意味ではありません。役所で発行されるいわゆる「原本」です。)を画一的に提出するさせないよう指導する旨の行政通達があるため、「住民票記載事項証明書」を提出させます(S50.2.17基発83号、婦発40号、S63.3.14基発150号、平11.3.31基発168号)。
  • 誓約書
  • 身元保証書
  • 健康診断書
  • 各種免許証の写し⇒業務に当たって一定の資格を要する場合。運転免許証であっても提出させるようにします。
  • 給与振込口座登録届(兼同意書)⇒賃金を口座振込みによって支払う場合には、労働者の同意を得ることとされています(労基則7条の2)。

4.個人情報の利用目的の通知

会社は、従業員の個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならないとされています(個人情報保護法15条)。また、会社は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならないとされています(同法18条)。

ところで、従前は5000 人以下の個人情報しか有しない中小企業・小規模事業者の方は適用対象外とされていました。しかし、情報通信技術の発展や事業活動のグローバル化等の急速な環境変化等を踏まえ、平成 29年5月 30 日から全面施行された改正個人情報保護法では、この規定は廃止され、個人情報を取り扱う「すべての事業者」に個人情報保護法が適用されることとなりました。

つまり、会社は、その事業規模を問わず、個人情報保護法の規定を遵守する必要があります。なお、安全管理措置については、従業員の数が 100 人以下の中小規模事業者(一部の事業者を除く。)に対して、特例的な対応方法が示されています。

5.マイナンバー

平成28年1月からマイナンバーの利用が始まりました。会社は、給与所得の源泉徴収票や社会保険の各種届出書類に、マイナンバーを記載して、税務署やハロ―ワーク等に提出する必要があります。そこで、会社は、労働者に対してマイナンバーの提供の求め、その提供を受けることになります。

マイナンバーも「個人情報」の一つですが、マイナンバー法で限定的に定められた事務の範囲内で、具体的な利用目的を特定して取得・利用しなければならないこと、安全管理措置など、特別な法律により厳格な管理が求められます。

マイナンバーの提供を受ける場合には、本人の身元確認と本人の番号確認を行う必要があります(マイナ法16条)。

もし従業員がマイナンバーカードを持っていれば、これ1枚で法令が求める身元確認と番号確認を行うことが出来ますが、現時点では、必ずしもマイナンバーカードの交付を受けている人は多くありません。

そのため、①番号確認のためにマイナンバー通知カード、②本人確認のためにⅰ)運転免許証などの写真付きの身分証明書か、ⅱ)住民票や年金手帳のような写真のない身元確認資料を提出させるようにします。

6.誓約書

服務規律など就業に当たって遵守させたい事項は、就業規則に網羅的に記載されていますが、就業規則の遵守義務や秘密保持義務などのように、特に労働者に意識付けを図りたい事項については、誓約書を作成して、これに記名押印を求めることがあります。

誓約書に記名押印したからといって就業規則に規定されている以上の法的な効力があるわけではありません。しかし、現実には就業規則を通読する機会(や意欲)は期待できないため、主に意識付けの目的で提出を求めるものです。

5.身元保証書

身元保証書は、主に「被用者の行為に因り使用者の受けたる損害を賠償することを約する」(身元保証ニ関スル法律1条。漢字ひらがな表記に改めた。)契約を内容とする書面です。つまり、万が一労働者が会社に損害を与えた場合に、身元保証人に(通常従業員と連帯して)その賠償をさせようとするものです。

もっとも、身元保証契約については、一定の場合の通知義務や(同法3条、4条)、有効期間の定めを設ける場合は最長5年(同法1条)とされるなど、身元保証人保護のための規定があるほか、たとえ「一切の損害を賠償します」いった文言が入っていても、裁判では「故意による損害は別として、過失による損害については、全額の賠償のケースは少な」い(安西愈「トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識〔14訂〕」中央経済社)とされているなど、賠償責任の範囲も制限されます。

それでも身元保証書の提出を求める企業が多くあるのは、損害賠償の負担だけでなく、「不正行為を防止する精神的な歯止め」という役割を期待しているためです(能登真規子「現代の身元保証(6・完)」(彦根論叢No.404))

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