基本給の改善が進まない介護職員の処遇
※写真と記事内容は関係ありません。 |
公益社団法人日本介護福祉会が、社会保障審議会に「介護職員処遇改善に関する調査の概要について」を提出しました。本調査は、「平成21年度からの処遇改善交付金と平成24年度の介護報酬改定が介護従事者の処遇改善にどのような影響を及ぼしたのか検証し、今後の介護福祉士の処遇改善に向けて」、政策提言していくための基礎資料とすることを目的とされたものです。
介護職員処遇改善交付金とは、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して、平成23年度末までの間、介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円が交付されたものです。その後、平成24年度の介護報酬改定では、「介護職員処遇改善交付金」の相当分を介護報酬に円滑に移行するために、例外的かつ経過的な取り扱いとして、平成27年3月31日までの間、「介護職員処遇改善加算」が創設され、現在に至っています。
今回の調査は、これらの政策の効果を測定する目的で行われたわけですが、結果としては、「平成23年以降介護職員処遇改善交付金(を)申請したところで処遇改善が行われたのは9割にとどまって」おり、「行われた処遇改善としては一時金の支給が最も多」いとされました。つまり、基本給の引上げ(10.6%)のように恒久的な処遇改善にはつながっていないことが明らかになったわけです。
多くの事業所で、一時金による処遇改善が行われたのは、調整がしやすいためと考えられます。処遇改善加算の位置づけが「例外的かつ経過的」とされていることを見越しての対応ともいえるでしょう。
しかし、今後も高齢化の進展する日本において、介護職員の確保というのも重要な課題です。調査結果では、「介護保険制度を持続可能にするためには、さらに介護職員の処遇改善を行い、介護人材確保対策を講じるべきであり、それを実現できるよう介護報酬の仕組みについて工夫を講ずべきである」としており、今後の介護報酬制度の見直しを求めていますが、事業所においても、これまで以上に工夫が求められるのではないでしょうか。現制度下において、離職率が高いとされる介護事業所ですが、内訳をみると離職率の高い事業所と低い事業所は二極化しているというデータもあります。介護事業所においても、賃金水準の上昇ができれば一番望ましいのですが、ほかにも賃金決定プロセスの透明化や教育訓練の充実等の施策にを行っていくことが重要になると思われます。
■関連リンク
介護給付費分科会長へ「介護職員処遇改善に関する調査結果」の概要を提出(日本介護福祉会HP)