世界の労働基準監督署からVOL012:新庄労働基準監督署

民法改正に伴う賃金等請求権の消滅時効の在り方について、一定の方向性が示されたようです。

今回の見直しは、平成29年6月2日に公布された民法改正により、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備等が行われことによるものです。これまで職業別の短期消滅時効(1年の消滅時効とされる「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」も含む)を廃止し、一般債権については、ⅰ)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、ⅱ)権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効によって消滅することと整理されました。

これにより、退職手当を除く請求権は2年間、退職手当の請求権は5年間の消滅時効を定めた労基法の規定が問題となりました。現行の2年の消滅時効期間は、もともと民法の短期消滅時効の1年では労働者保護に欠ける等の観点から定められたものですので、今回民法の時効が上記のように改正されたことにより、民法の規定よりも短くなってしまったためです。

この点について、今回労働政策審議会労働条件分科会で公益委員の見解が次のように示されました。

  • 賃金請求権の消滅時効期間は、民法一部改正法による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とする
  • 起算点は、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点を維持し、これを労基法上明記する

しかし、時効については、「賃金請求権について直ちに長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の権利関係を不安定化するおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要がある」としたうえで、当分の間、現行の労基法の記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る 一定の労働者保護を図るべきであるとされました。

このように、賃金については「当分の間」、現行の2年から1年延長した「3年」とすることとされ、改正法の施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講じることとすべきとされました。

なお、年次有給休暇などのその他の権利(退職金の請求権を除きます。)については、現行の消滅時効期間(2年)を維持すべきとされました。

以上が「公益委員」による見解で、今後はこの線で議論が進められるものと思われます。施行は来年4月1日が予定されており、早急な対応が必要となります。

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参考リンク

第157回労働政策審議会労働条件分科会(厚労省HP)