世界のハローワークからVOL017:ハローワーク市川

今回は、前回に引き続きキャリアアップ助成金のQ&Aについて取り上げます。今回は、前回以外で、注意すべき内容について紹介します。

①-2正社員化コース(全体)について
Q-5 正規雇用労働者への転換制度を規定し、就業規則等に転換の要件として「勤続1年以上」と規定しながら、勤続1年未満で所属長の推薦を受けて転換した場合は、本コースの正社員化コースの対象となるのでしょうか。なお、就業規則等に例外的な取扱いについての規定はありません。
A-5 就業規則等に例外的な取扱いについての規定がない場合は、客観的に確認可能な要件とは言えないことから、本コースの対象となりません。

このQ&Aはキャリアアップ助成金(正社員転換コース)の重要な内容となります。すなわち、キャリアアップ助成金では、就業規則等で制度化されている転換制度に基づいて正社員登用が行われることが条件となっています。したがって、就業規則の定めと異なる転換については、対象外となります。

なお、就業規則の定めに基づく転換であっても、「年齢制限の設定や勤続年数の上限設定(例えば、「○歳未満」「勤続○年未満」など)により、正社員転換制度の対象者を限定している場合、対象となりません」とされています(A-6)。

①-3正社員化コースにおける賃金3%以上の増額について
Q-2 諸手当を含め転換前後で賃金総額が3%以上増額していることが必要となりますが、算定に含めることのできない諸手当はどのような手当ですか。
A-2 原則として、転換前後で支払われた全ての賃金で比較することとしていますが、「実費補填であるもの」、「毎月の状況により変動することが見込まれるため実態として労働者の処遇の改善が判断できないもの」、「賞与」については、その名称を問わず比較の算定には含めません。
また、転換後の賃金に定額で支給される諸手当を含める場合、当該手当の決定及び計算の方法(支給要件を含む)が就業規則または労働協約に記載されているものに限ります
ただし、転換前において定額で支給される諸手当は、就業規則等への記載の有無にかかわらず、転換前6か月間の賃金に含めます(就業規則等への記載がなく転換後の賃金に含められない場合も同様となりますので、ご留意ください)
※転換後の算定に含める各種手当は、処遇改善の確認及び適切に就業規則等を整備している事業主への助成という観点から、その金額の決定方法及び計算方法(支給要件含む)が就業規則等に明記されたものに限ることとしていますので、規定内容に不足や誤りが無いことを必ず確認してください。
(以下省略)

このように、3%昇給要件に算入できる手当は就業規則等への規定があることが求められます。規定漏れなどないようにしてください。なお、令和5年版で追記されたものとして「※転換後の算定に含める各種手当は、処遇改善の確認及び適切に就業規則等を整備している事業主への助成という観点から、その金額の決定方法及び計算方法(支給要件含む)が就業規則等に明記されたものに限ることとしていますので、規定内容に不足や誤りが無いことを必ず確認してください。」があります。

Q-5 歩合給である有期雇用労働者について、正社員転換後も歩合給である場合の取扱はどうなりますか。
A-5 例えば、転換前後において基本給(月給)+歩合給という給与体系とし、転換前後基本給は、最低賃金を割っているが、最低賃金保証を行うため、仮に歩合が少なくても歩合分を増やすことで最低賃金は払われているとします。
このとき、最低賃金保証が就業規則等で規定されており、固定給部分が明確であれば,その額が3%以上増加している場合は支給対象となり得ます。 なお、歩合給についてはQ-2に記載のとおり「毎月の状況により変動することが見込まれるもの」に該当するため、除外して転換前後の賃金を比較します。

このように歩合給制であっても正社員転換コースの受給可能性は0ではありません。ただし、歩合給制で時間外割増賃金等が適切に支払われていないことが多かったり、賞与・退職金制度がないことが多かったりするので、要件を満たさないことの方が多いように思います。

Q-13 同一労働同一賃金を採用している事業所で有期雇用労働者と正規雇用労働者の職務内容に違いがないため、賃金は同一額を支給している場合、賃金3%以上増額要件をどのように満たせば良いのでしょうか。
A-13 キャリアアップ助成金については、有期雇用労働者等の正規雇用労働者への転換、処遇改善等、企業内でのキャリアアップを促進するための包括的な助成措置として創設されたものであり、同一労働同一賃金の実現など非正規雇用労働者の待遇改善に係るインセンティブ付与を目的として運用しているところです。 同一労働同一賃金が完全実施されている企業においては、非正規雇用労働者の待遇改善がこれ以上見込まれないため、賃金3%以上の増額することは困難と思われますが、雇用保険料という限られた財源を有効活用するためにも、賃金3%増額要件を設けていること等に対してご理解ください。

同一労働同一賃金が完全実施されているケースはまれだと思いますが、正社員登用によって昇給しないなど、受給要件を満たさない場合は、キャリアアップ助成金を受給することはできません。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

キャリアアップ助成金(厚生労働省HP)