厚生労働省が副業・兼業における労働時間の通算について、簡便な労働時間管理の方法としての「管理モデル」について資料を公表しました。「管理モデル」とは、副業・兼業時の労務管理における労使双方の手続上の負荷を軽くするためのもので、「管理モデル」で定めた労働時間の上限を超えない限り、他の使用者の事業場の実労働時間を把握することなく、労働基準法を守ることができます。

「管理モデル」では、労働者が使用者A(先契約)の事業場と使用者B(後契約)の事業場で、副業・兼業を行う場合、使用者Aでの「法定外労働時間」(1週40時間、1日8時間を超える労働時間)と、使用者Bでの「労働時間」を合計して、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるように、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定します。

上限設定の手順は、①使用者Aの法定外労働時間と使用者Bの労働時間の合計の範囲を決め、②手順①の合計の範囲内かつ、それぞれの事業場の36協定の範囲内で、それぞれの労働時間の上限を決めます。たとえば、使用者Aの下での法定時間外労働を45時間、使用者Bの下での労働時間全体を35時間とするなどです。

管理モデルの導入後、使用者Bは、使用者Aでの実際の労働時間にかかわらず、自らの事業場の「労働時間全体」を「法定外労働時間」として、割増賃金を支払います。これにより、使用者Aおよび使用者Bは副業・兼業の開始後、それぞれあらかじめ設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場での実労働時間の把握を要することなく、労働基準法を守ることができます。

管理モデルにおいては、原則的な労働時間通算の考え方とは異なる順序で通算を行うことから、使用者Bにおいて労働時間全体に割増賃金を支払えば、使用者Bは使用者Aでの実労働時間を把握する必要がありません。

なお、管理モデルで設定した労働時間の上限を超えて労働させたことで、時間外労働の上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)を超えるなどの労働基準法違反が発生した場合、管理モデルで設定した労働時間の上限を超えて労働させた方の使用者が、労働時間通算に関する法違反の責任を問われます。

管理モデルを導入する場合は、使用者A(先契約)が、副業・兼業先の使用者B(後契約)に提案することを想定しています。また、労働者を通じて導入を提案することもできます。

事業場のルールとして、管理モデルによる副業・兼業を原則とすることもできます。ただし、副業・兼業先の使用者が管理モデルに応じないなど、管理モデルによる副業・兼業が難しい場合でも、使用者と労働者との間で十分にコミュニケーションをとり、双方納得のいく形で副業・兼業を進めることが重要です。

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参考リンク

「副業・兼業に取り組む企業の事例について」を公表しました