今回の記事、ざっくり言うと・・・
- 「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」が改訂
- 法定福利費を内訳明示した見積書が、建設業法第20条第1項に規定する見積に該当すること等が明確化された
- 「遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱とすべきである」とされており、「特段の理由」が通達で示されている
国土交通省が「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を改訂し、7月28日から施行されました。
本ガイドラインは、建設業における社会保険の加入について、元請企業・下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にするため、平成24年11月に施行されたものです。
今回改正されたのは見積り等に関する部分で、法定福利費の確保のためには法定福利費を内訳明示した見積書の提出の更なる徹底が不可欠であり、特に再下請負の場合の徹底が課題とされているとされているため、法定福利費を内訳明示した見積書について、以下の明確化するとされました。
- 法定福利費を内訳明示した見積書が、建設業法第20条第1項に規定する見積に該当すること
- 再下請負の場合でも、元請・1次下請間の場合と同様に、法定福利費を内訳明示した見積書を提出・ 尊重すること
ところで、本ガイドラインでは、「遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱とすべきである」とされています。
この「特段の理由」については、工事の円滑な施工に著しい支障が生じる懸念がある場合を除き、以下のような場合に限定するべきであることが、通達で示されています。
- 当該作業員が現場入場時点で60歳以上であり、厚生年金保険に未加入の場合(雇用保険に未加入の場合はこれに該当しない)
- 例えば伝統建築の修繕など、当該未加入の作業員が工事の施工に必要な特殊の技能を有しており、その入場を認めなければ工事の施工が困難となる場合
- 当該作業員について社会保険への加入手続き中であるなど、今後確実に加入することが見込まれる場合
また、同通達では、現場に入場する各作業員が就労形態に応じて入るべき保険を明確化するため、以下の方針を徹底することとされています。
- 元請企業は、作業員名簿に記載された作業員が、雇用されている労働者か、企業と請負関係にある者か疑義がある場合は、作成した下請企業に確認を求めるなど、適切な保険に加入していることを確認すること
- 下請企業は、労働者である社員と請負関係にある者を明確に区分したうえで、労働者である社員については保険加入を適切に行うとともに、請負関係にある者については、再下請負通知書を適切に作成すること
このように国土交通省は、社会保険料等の法定福利費を明確化するとともに社会保険未加入者の現場入場させないことを求めており、社会保険未加入の建設業者にはますます厳しい状況となるものと思われます。
関連リンク
社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン(国土交通省HP)
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