東京労働局と神奈川労働局の管内で多重派遣をおこなった事業所について、業務停止命令および改善命令が行われたことが発表されました。

発表資料によれば、事実の概要は次のとおりです(下図も参照)。

  • R社は、S社に対する違法な労働者派遣を行い、さらに、株式会社S社は、株式会社R社ほか2社の派遣元事業主から派遣された労働者と、別の2社から供給された労働者をK社に労働者供給した。
  • さらに、K社は、S社から供給された労働者と別の派遣元事業主から違法な労働者派遣で受け入れた労働者を、別のIT企業へ供給し、同社の指揮命令によりソフトウェア開発業務に従事させており、これらの企業間でいわゆる多重派遣が行われていた。
  • この違法な多重派遣により、同IT企業で就労していたR社が雇用する労働者は、少なくとも平成24年4月1日から平成25年11月27日までの間、延べ673人日(実労働者数2名)、K社が同IT企業へ労働者供給していた労働者は、少なくとも平成24年3月1日から平成25年11月27日までの間、延べ1,765人日(実労働者数6名)であった。
  • 東京労働局および神奈川労働局は、労働者派遣法に基づき、労働者派遣事業を営む事業主3社に対して、労働者派遣事業停止命令及び労働者派遣事業改善命令を行った。
  • 業務停止期間は平成26年7月29日から同年8月11日までimage106

「多重派遣」は、派遣先が派遣元事業主から労働者派遣を受けた労働者をさらに業として派遣することを繰り返すことをいいます。この場合、当該派遣先は当該派遣労働者を雇用している訳ではないため、形態としては労働者供給を業として行うものに該当するものであり、職業安定法第 44 条の規定により禁止されるものとされています(K社へ向かう2つの矢印は、いずれも「出向と称する契約」ですが、S社からのそれは「労働者供給」、もう一つの派遣元からのそれは「労働者派遣」と扱われているのはそのためと考えられます。)。

どのような事情があったかは明らかではありませんが(一時的な受注の増大による派遣スタッフの不足?)、業務委託や出向といった形式的には労働者派遣でない契約であっても、実態によって本事例のように行政指導の対象となることがあります。派遣元事業主は、この点に十分注意が必要です。

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※本記事は、将来の法令遵守のために違反事例を取り上げたものです。そのため、具体的社名等が掲載されている本行政指導へのリンクは貼らないこととします。ご了承ください。

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