世界の労働基準監督署からVOL018:成田労働基準監督署

現在、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」において、無期転換ルールの改正について議論が行われています。

無期転換ルールについては、2018年度および2019年度に無期転換申込権が生じた者のうち、無期転換を申し込んだものは約3割にとどまっており、常用労働者5人以上の事業所において、同年度に無期転換ルールにより無期転換した労働者は、約118万人と推計されています。一方、無期転換権が生じたものの申し込まなかった者のうち、ほとんどが有期労働契約のまま継続して雇用されており、無期転換の希望の有無をみると、希望する者が2割弱、希望しない(有期労働契約を継続したい)者が2割強、わからないとする者が5割超と多くなっています。

また、無期転換ルールに関して何らか知っている企業は約8割となっていますが、有期契約労働者のうち約4割が制度を知らないという現状も明らかになりました。無期転換ルールの導入後は人手不足感が強い雇用環境でしたが、今後は雇用環境が厳しくなる可能性もある中で、この制度を活用する希望や期待が高まる可能性があるという理解のもとで制度全般にわたる検証が行われています。

そこで、現状としては、次のような論点について議論が行われています。

  • 制度の効果的な周知
  • 使用者からの通知等
    • 無期転換ルールについて、申込権発生の有無や転換後の労働条件などを知らず、無期転換申込権の行使に至らない労働者が見られる中で、個々のに通知・周知する方策が今後検討されます。
  • 無期転換前の雇止めその他の無期転換回避策
    • 無期転換前の雇止めや無期転換回避策が見られる中、無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし、問題があるケースについて、考え方を整理して周知していくことなどが検討されています。
  • 無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い
  • 通算契約期間について(大きな見直しはない方向)
  • クーリング期間について(大きな見直しはない方向)
  • 転換後の労働条件の「別段の定め」について
    • 「別段の定め」に関し、就業規則で規定する場合には労契法7条や10条の合理性が求められるほか、個別契約の場合には合意が必要であるという原則を明確化した上で、その枠内で労働条件の変更が可能であることが明確になるよう施行通達の記載を修正することを検討するべきといった意見が出されています。
  • 無期転換後の労働条件の見直しについて
  • 無期転換労働者と他の無期契約労働者との待遇の均衡について
    • 処遇格差に不満がある労働者の中には、説明が不十分であるため理解の相違があることも考えられ、使用者からの説明を求める者も一定存在していることから、無期転換後の労働条件を定めるにあたって考慮した事項の説明を促すことなどが検討される見込みです。
  • 有期特措法について第1種(高度専門知識を有する有期雇用労働者)及び第2種(定年後継続雇用の有期雇用労働者)の活用について
    • 有期特措法がなければ、企業がプロジェクトの進捗状況等に応じて必要な高度専門職を雇用しにくくなるほか、65歳を超える高齢者の継続雇用に慎重になると想定されるため、有期特措法があることで雇用が進んでいるなど評価する意見がある一方で、活用状況は十分とは言いがたく、特例の存在を知らないという課題はあるため、制度を周知して活用を促すべきといった意見が出されています。

このように議論は多岐にわたっていますが、現時点では、大きな制度変更はなく、議論は無期転換ルールの利用を促進するための対策などが中心になるように思われます。

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参考リンク

多様化する労働契約のルールに関する検討会 第8回資料(厚生労働省HP)