育児介護休業法等の改正法案が国会に提出されました。そこで、今回は提出された法案の概要についてみていくことにしましょう。

近年たびたび改正が行われてきた同法ですが、今回の改正の目的は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を講ずるものとされています。

法案には3つのテーマがあります。すなわち①子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、②育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、③介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等です。

はじめに、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充については、次の5点について改正が予定されています。

  • 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付けること、また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付けること(公布の日から起算して1年6月以内において政令で定める日)
    • 「柔軟な働き方を実現するための措置」とは、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇の付与、その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択する。
  • 所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子(現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大すること
  • 子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止すること
  • 3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加すること
  • 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付けること(公布の日から起算して1年6月以内において政令で定める日)

次に、育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化については、次の3項目があります。

  • 育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超(現行1,000人超)の事業主に拡大すること
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を事業主に義務付けること
  • 次世代育成支援対策推進法の有効期限(現行は令和7年3月31日まで)を令和17年3月31日まで、10年間延長すること(公布日に施行)

介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等では、次の4項目があります。

  • 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付けること
  • 労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付けること
  • 介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止すること
  • 家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。

このように、今回の改正は育児支援の対象期間の拡大と仕事と介護の両立支援制度の周知が主な内容といえます。仕事と介護の両立支援の周知は進んでいるとはいえない実態をふまえた改正と思われます。

改正法の施行時期は、記事中に特に記載のないものは、令和7年4月1日の予定です。

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参考リンク

第213回国会(令和6年常会)提出法律案(厚生労働省HP)