政府が「令和4年度  我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和5年版 過労死等防止対策白書)を閣議決定しました。「過労死等防止対策白書」は、過労死等防止対策推進法の第6条に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書です。8回目となる今回の白書の主な内容は以下のとおりです。

  1. 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づく調査分析として、睡眠の不足感が大きいと疲労の持ちこし頻度が高くなり、うつ傾向・不安を悪化させ、主観的幸福感も低くなる傾向があること、芸術・芸能分野における働き方の実態、メディア業界や教職員の労災事案の分析結果等について報告。
  2. 長時間労働の削減やメンタルヘルス対策、国民に対する啓発、民間団体の活動に対する支援など、令和4年度の取組を中心とした労働行政機関等の施策の状況について詳細に報告。
  3. 企業や自治体における長時間労働を削減する働き方改革事例やメンタルヘルス対策、産業医の視点による過重労働防止の課題など、過労死等防止対策のための取組事例をコラムとして紹介。

本白書では過労死防止のための疫学研究等も紹介されています。このうち、過労死等の発生が多いトラックドライバーについて、慢性炎症反応の指標の一つである唾液中のC反応性蛋白(CRP)の関連を探索的に検討し、過重労働の生体負担を評価するバイオマーカーとしての唾液中CRPの適用可能性を検討したものが紹介されています。

CRPは、体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合、血液中に増加するため、最近では、CRP測定が心血管疾患リスクの評価に有用であることが明らかになっているとされています。

調査では、トラックドライバー88人(日帰り地場運行34人、2泊3日以上の長距離運行54人)について、労働関連要因とCRP値の相関を検討したところ、地場運行群は長距離運行群よりCRP値が高く(第3-4-2-2図の左)、また、地場運行群では、睡眠時間が短いほど出庫時のCRP値が有意に高かった(第3-4-2-2図の右)。一方、長距離運行群では有意な相関は認められませんでした。なお、地場運行群と長距離運行群の背景要因について、「睡眠時間」はそれぞれ6.0[±1.1]時間、6.8[±1.4]時間で地場運行群の方が睡眠時間が短く、「一運行当たりの拘束時間」はそれぞれ11.5[±1.7]時間、78.3[±31.0]時間で長距離運行群の方が拘束時間が長く、「1週間あるいは2週間の観察期間中の11時間未満の勤務間インターバルの経験者数」はそれぞれ18人(52.9%)、3人(8.3%)で地場運行群の方が11時間未満の勤務間インターバルを経験しているドライバーの割合が高いという結果でした。

以上の結果から、唾液中CRPが過重労働の生体負担を評価する指標として有望であり、将来的に、慢性炎症のバイオマーカーが実用可能かどうかを検証するために、さらなるデータの蓄積を行うとされています。

このように過労死防止の最先端の取組みも知ることができます。

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参考リンク

令和5年版過労死等防止対策白書(本文)(厚生労働省HP)