世界の年金事務所からvol007:葛飾年金事務所

厚生労働省が「年収の壁」に関する当面の対応策を公表しました。これは、厚生年金保険・健康保険(以下「社会保険」という。)では、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(20歳以上60歳未満の配偶者は、併せて国民年金第3号被保険者となります。)として、保険料の負担が発生しないという仕組みがあるため、こうした方の収入が増加した場合、被扶養者(第3号被保険者)でなくなり、社会保険料の負担が発生することになります。

保険料負担が生じると、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がおられます。こうした方が意識している収入基準(年収換算で106万円や130万円)がいわゆる「年収の壁」(「106万円の壁」や「130万円の壁」)と呼ばれています。また、企業が支給する配偶者手当に収入要件がある場合も、就業調整の要因になっていると指摘されています。

このうち、「130万円の壁」は、厚生年金保険の被保険者数が常時100人以下の事業所で働くパート・アルバイト(短時間労働者)が年収130万円以上となり、国民年金・国民健康保険に加入し保険料負担が発生するのを避ける行動によるものです。

これについて、今回発表された対策は、パート・アルバイトとして働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みです。本措置は措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)については、10月20日以降の被扶養者認定・被扶養者の収入確認において適用します。なおこの措置は、あくまでも当面の措置として導入するものであり、今後、さらに制度の見直しに取り組むこととしてされています。

今回の措置は、被扶養者の収入確認に当たって、通常提出が求められる書類と併せて、一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。ここで「一時的な収入変動」の具体的な上限額については示されていません。これは、仮に上限を設けた場合、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねないことなどが理由として挙げられています。したがって、協会けんぽなどの各保険者が雇用契約書等も踏まえつつ、当該増収が一時的なものかどうか確認することになります。

なお、法令・通知等に基づき、被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合に、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合等、通常の被扶養者としての要件に該当しないこととなる場合は、被扶養者の認定が取り消されることになります。

今回の措置は、あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までを上限とすることとされています。そのため、新たに被扶養者を認定する場合を含む被扶養者の収入確認に当たって事業主の証明を用いて一時的な収入変動である旨を保険者が確認した場合には、「1回」と数えられることとなります。したがって、被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、「連続2回」とは連続する2年間の各年における収入確認において事業主の証明を用いることが「連続2回」になります。なお、年1回と異なる頻度で被扶養者の収入確認を行っている保険者の場合、どの期間について一時的な収入変動に係る事業主の証明を取得する必要があるかを加入している健康保険組合等に相談する必要があります。

なお、一時的な収入変動として認められる事例としては、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が想定され、 一時的な収入変動に該当する主なケースとして次のようなものが例示されています。

  • 他の従業員が退職したことにより業務量が増加したケース
  • 他の従業員が休職したことにより業務量が増加したケース
  • 業務の受注が好調だったことにより、当該事業所全体の業務量が増加したケース
  • 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加したケース

一方で、基本給が上がった場合や、恒常的な手当が新設された場合など今後も引き続き収入が増えることが確実な場合においては、一時的な収入増加とは認められません。

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参考リンク

年収の壁・支援強化パッケージ(厚生労働省HP)