被保険者等からの暴力等を受けた者に係る被扶養者認定の取扱い等について、内閣府男女共同参画局において、「配偶者からの暴力による被害者に係る生活再建支援の強化について」が取りまとめられたことを踏まえ、令和3年に発出されていた通知が改正されることになりました。今回は、改正後の通達の内容についてみていきましょう。

被害者が健康保険の被扶養者から外れる手続の場合、被保険者からの届出に基づいて行われているところですが、被扶養者認定を受けている被害者が被扶養者から外れる場合、この届出は期待できないため、被害者から、被保険者と当該被害者が生計維持関係にないことを申し立てた申出書とともに、児童相談所及び婦人相談所等の公的機関から発行された被保険者等からの暴力等を理由として保護した旨の証明書、または被害者への支援を行っている民間支援団体(一時保護委託を受けている民間シェルター等)から発行された確認書を添付して、当該被害者が被扶養者から外れる旨の申出がなされた場合には、保険者において、当該被害者を被扶養者から外すことが可能とされています。

また、証明書等において、当該被害者の同伴者についても同様の証明がなされている場合には、同伴者についても被扶養者から外れることが可能とされています。

申出があり、保険者が当該被保険者と当該被害者との間に生計維持関係がないと判断した場合は、提出期限を設けた上で、被害者を被扶養者から外す届出を事業主を経由して提出する、または生計維持関係がないという申出への反証を示す書類がある場合は当該被保険者から保険者へ直接提出するよう、連絡することとされています。

提出期限内に書類が提出されない場合には、当該被害者を被扶養者から外した上で、その旨事業主及び当該被保険者に対し通知されます。逆に、引き続き当該被害者を被扶養者として認定する場合は、被害者に対し通知されます。

なお、これらの取扱いにあたっては、被害者の居所などが被保険者等に伝わることのないよう厳重に管理することとされています。

ところで、健康保険法では、被保険者が自己の故意の犯罪行為等により給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない旨の定めがなされており、被保険者の故意の犯罪行為等により被扶養者が療養を受けたときは、当該療養に係る家族療養費は、当該被保険者に支給されるものであることから、保険給付は制限されると解されているところですが、被害者は、上記の申出により被扶養者から外れるまでの間において、被扶養者の資格のまま緊急的に受診し、金銭的負担を負わざるを得ない場合があるところ、このような場合についてまで、保険診療による受診を制限することは、被扶養者から外れるまでの間、実質的に保険給付が受けられない結果となるため、被害者が被扶養者から外れるまでの間の受診については、加害者である被保険者を第三者と解して同条の規定を適用し、被害者は、保険診療による受診が可能であると取り扱うことが同法の趣旨等に沿うものであるとしました。

このようにDV被害者の健康保険の被扶養者からの脱退は一定の便宜が図られています。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

「被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱い等について 」の一部改正について(令和5年3月30日保保発0330第3号)(厚生労働省HP、PDF)