今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 労働政策研究・研修機構(JIL)が「介護者の就業と離職に関する調査」の結果を公表
  • 一般的な全介護期間の長さについて、要介護者が施設や病院で過ごす期間も含めると平均39.5 か月
  • 同調査では、「勤務先が法定を超えて定める制度については、休業取得可能期間が93 日を超える長期の休業よりも、複数回に分割できる方が就業継続率の上昇につながる」とされている

image107労働政策研究・研修機構(JIL)が「介護者の就業と離職に関する調査」の結果を公表しました。

本調査は、「介護離職の実態を把握し、家族の介護を担いながら働き続けることのできる支援の課題を明らかにする」ことを目的として、介護期の働き方等について調査したものです。

介護離職は、総務省「就業構造基本調査結果(平成24年)」によれば、年間約10万人、その予備軍とみ られる人も約40万人に上るとされており、現在その影響が懸念されています。本調査は、介護離職防止の施策を検討する上でも、参考になるものと考えられますので、今回は、その概要についてみていくこ とにしましょう。

1.介護期間と介護離職

まず、一般的な全介護期間の長さについて、要介護者が施設や病院で過ごす期間も含めると平均39.5 か月と、きわめて長期にわたることが報告されています。その負担が重いとされる「在宅介護期間の平均は18.0 か月」とされており、介護が長期間にわたるものであることがわかります。

そして、「要介護者と同居している場合は在宅介護期間が1 年を超えると同一就業継続率は下が」るとされています。一方、「別居の場合は3 年を超えると下がる」とされており、要介護者が同居か別居かで本人への負担が異なることも明らかになっています。

2.介護休業制度と介護離職

ここで参考になるのは、「勤務先が法定を超えて定める制度については、休業取得可能期間が93 日を超える長期の休業よりも、複数回に分割できる方が就業継続率の上昇につながる」とされている点が注目されます。

もっとも、この点については、既に育児介護休業法の改正により、少なくとも3回までの分割を認める内容の改正が行われています(平成29年1月1日施行)。今後、独自の介護離職防止策を検討する場合は、このような実際のニーズに応じたものとなるよう、各種調査や社内インタビューを実施することも重要です。

3.柔軟な働き方と就業継続

要介護者がいる場合、現行の育児介護休業法では、①短時間勤務、②フレックスタイム、③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、④介護経費の援助措置のうちいずれかを講ずることが企業に義務づけられています。

その効果については、介護経費の援助以外の実質的に勤務時間を変更する制度の有無ごとに就業継続率の結果は、介護発生時の勤務先に3 つの制度のいずれかが「あった」場合は、「なかった」「わからない」よりも同一就業継続率が高いものの、その差は小さいとされています。

むしろ、「残業のない働き方を進めることや、自己裁量性のある働き方を進めることが重要であることを調査結果は示唆している」とされており、時間をコントロールしやすい働き方が、介護離職防止策に資するものと考えられます。

関連リンク

介護者の就業と離職に関する調査(JIL、HP)

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