近年、労働局がオンラインセミナーを開催することが増えています。そこで、今回は滋賀労働局が直近で開催した「女性活躍推進法に基づく男女の賃金差異の公表とえるぼし認定&職場におけるハラスメント防止対策解説セミナー」の資料を基に、ハラスメント防止対策についてみていくことにしましょう。

現在法令により防止措置が義務付けられているのは次の3つです。

  1. セクシュアルハラスメント(男女雇用機会均等法第11条)
  2. 妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント(男女雇用機会均等法第11条の2、育児・介護休業法第25条。以下「マタハラ・ケアハラ」といいます。)
  3. パワーハラスメント(労働施策総合推進法第30条の2)

このうち「セクシュアルハラスメント」とは、「職場において行われる労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が①労働条件について不利益を受けたり、②「性的な言動」により就業環境が害されること」をいいます。①を「対価型」、②を「環境型」とよばれています。①の例としては、事業主に性的な関係を要求されたが拒否したところ、必要な業務上の指示をされない等の嫌がらせを受けた場合等、②の例としては上司から髪や肩を度々触られ、不快に感じ就業意欲が低下した場合等があります。なお、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。

マタハラ・ケアハラとは「職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されること」をいいます。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。マタハラ・ケアハラも①制度等の利用への嫌がらせ型と②状態への嫌がらせ型の2つに区分することができます。①の例としては制度の利用や申し出などをさせないようにするもの、②の例としては妊娠したことなどに対する嫌がらせなどがあります。

また、女性労働者の妊娠・出産等、育児・介護休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他不利益取扱は、男女雇用機会均等法第9条第3項、育児・介護休業法第10条等で禁止されています。

最後のパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されることの全て満たす言動が該当します。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワハラに該当しません。

この①から③までのなかでも、もっともポイントになるのは②です。これは、社会通念に照らし当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいいます。

パワーハラスメントは次の6つに分類されることは、有名なのでご存じの方も少なくないのではないでしょうか。

上記のハラスメント防止のため、事業主には次のような措置を講じることが義務付けられています。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
    • 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
    • 行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
    • いわゆるマタニティハラスメントの防止に当たっては、加えて次の2点の周知が必要です
      • 制度等の利用ができること
      • 妊娠・出産、育児・介護休業等に関する否定的な言動がハラスメントの原因や背景となり得ること
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
    • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること職場におけるハラスメントの発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合で あっても、広く相談に対応すること
  3. 職場におけるハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
    • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
    • 速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと(事実が確認できた場合)
    • 行為者に対する措置を適正に行うこと防止(事実が確認できた場合)
    • 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も同様)
  4. 上記1から3までの措置と併せて講ずべき措置
    • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
    • 相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
    • いわゆるマタニティハラスメントの防止に当たっては、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置として、業務体制の整備など、事業主や妊娠した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じることが求められます。
お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

滋賀労働局主催 オンラインセミナー(滋賀労働局HP)