世界の労働基準監督署からVOL012:新庄労働基準監督署

令和6年度における労災補償業務の運営に当たっての留意点が示されました。

近年、労災保険の新規受給者数は年間77万人を超える状況にある中、労災補償行政の使命は、被災労働者に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付等を行うことにより、セーフティネットとしての役割を担うことにあるとされています。

このためには、社会情勢に応じた業務運営の改善を実施していくことが必要不可欠であるところ、 特に過労死等や石綿関連疾患など職業性疾病をめぐる国民の関心は高く、過労死等に係る労災請求件数は3,000件以上に上るほか、石綿関連疾患に係る労災請求件数は1,200件以上、特別遺族給付金に係る請求件数も500件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあります。加えて新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数も引き続き多数に上り、令和5年度においても既に3万件を超えているところ、これらの労災請求事案に引き続き迅速かつ公正に対応していく必要があるとされています。

さらに、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第2条第1項に規定する特定受託事業者が行う事業について、新たに特別加入の対象とする省令改正が行われ(1月に公布)、本改正省令が、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行の日(令和6年度中を予定)から施行される予定であり、適切に対応する必要があるとされています。

以上の点をふまえ、次の事項に留意することとされています。

  1. 過労死等事案などの的確な労災認定
  2. 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
  3. 業務実施体制の確保及び人材育成、デジタル化の推進

特に1のうち過労死については、①労働時間の的確な把握、②過労死等事案に係る関係部署との連携、③労災認定基準の適切な運用の3点について、留意点がのべられています。たとえば、労働時間の特定に当たっては、労災認定のための労働時間は、労働基準法第32条で定める労働時間と同義であることを確認したうえで、関係通達に基づき、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等の必要な調査を行い、監督部署と協議を行った上で、労災部署において的確に労働時間を特定することとされています。その際、労働時間関係資料等客観的な記録が存在しない場合であっても、聴取内容等から労働者が使用者の指揮命令下において実際に労働していたと合理的に推認される場合には、監督部署と協議の上、当該時間を労働時間として特定するよう徹底することとされました。

このように、本資料は、労災に関する近年の重要なテーマについて、行政の方針を理解する資料として参考になります。

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参考リンク

労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について(令和6年2月26日労災発0226第1号)