令和5年4月から医師について新たな時間外労働の上限規制が適用されるのを前に、現在宿日直許可の取得を検討する医療機関が増えています。これは、宿日直許可を受けた場合には、その許可の範囲で、労働基準法上の労働時間規制が適用除外となることから、①宿日直許可を受けた場合には、この上限規制との関係で労働時間とカウントされないこと、②勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)との関係で、宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として取り扱えることなど、医師の労働時間や勤務シフトなどとの関係で重要な要素になるためです。

断続的な宿日直の許可基準は以下のとおりです。

  1. 勤務の態様
    1. 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
    2. 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。したがって始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
  2. 宿日直手当
    • 宿直勤務1回についての宿直手当又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の一人1日平均額の1/3以上であること。
  3. 宿日直の回数
    • 許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足であり、かつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
  4. その他
    • 宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。

また、医師等の宿日直勤務については、前記の一般的な許可基準に関して、より具体的な判断基準が示されており、以下の全てを満たす場合には、許可を与えるよう取り扱うこととされています。

  1. 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。(通常の勤務時間が終了していたとしても、通常の勤務態様が継続している間は宿日直の許可の対象にならない。)
  2. 宿日直中に従事する業務は、前述の一般の宿直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば以下の業務等をいう。
    • 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
    • 医師が、外来患者の来院が通常予定されない休日・夜間(例えば非輪番日など)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
    • 看護職員が、外来患者の来院が通常予定されない休日・夜間(例えば非輪番日など)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
    • 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
  3. 宿直の場合は、夜間に十分睡眠がとり得ること。
  4. 上記以外に、一般の宿日直許可の際の条件を満たしていること。

労働基準監督署に宿日直許可の申請を行ってから許可を受けるまでの流れは、おおむね以下のとおりです。

  1. 労働基準監督署に、申請書(様式第10号)(原本2部)及び添付書類を提出
    • 申請対象である宿日直の勤務実態が、上記の条件を満たしていることを書面上で確認します。
  2. 労働基準監督官による実地調査
    • 宿日直業務に実際に従事する医師等へのヒアリングや、仮眠スペースの確認等を、原則として実地で行い、申請時に提出された書類の内容が事実に即したものかの確認を行います。また、勤務実態の確認に必要な期間(個別の申請ごとに異なりますが、おおよそ直近数ヶ月間)の勤務記録の提出を求められます。
  3. 1,2の結果、許可相当と認められた場合に宿日直許可がなされ、許可書が交付されます。

申請時の添付書類としては、宿日直当番表、宿日直日誌や急患日誌等、宿日直中に従事する業務内容、業務内容ごとの対応時間が分かる資料(電子カルテのログや急患日誌等を基に作成)、仮眠室等の待機場所が分かる図面及び写真、宿日直勤務者の賃金一覧表、宿日直手当の算出根拠がわかる就業規則等があります。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

医師の働き方改革(厚生労働省HP)