写真は記事内容と関係ありません。

報道等ですでに大きく取り上げられているように、法務省内の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が報告書のたたき台で技能実習制度の廃止を盛り込みました。そこで、ここではこのたたき台について、見ていきたいと思います。

たたき台では、「委員の意見」と「検討の方向性」が大部分を占める構成となっています。制度の廃止については、「委員の意見」の中で最初に見られます。

実態に合わせ、技能実習制度を廃止した上で、国内産業にとって人材確保の制度として再出発することが必要。それにより、日本のどの産業にどれくらいの人数の受入れが必要かという議論や検証ができるようになり、特定技能制度と整合性がとれた、キャリアパスを見通すことのできる制度になる。

報告書(たたき台)P3

そして「検討の方向性」の冒頭で、次のように廃止の方向性が明確に示されています。

技能実習生が国内の企業等の労働力として貢献しており、制度目的と運用実態のかい離が指摘されていることにも鑑みると、今後も技能実習制度の目的に人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受入れを続けることは望ましくないことから、現行の技能実習制度を廃止し、人材確保及び人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきである(下線は筆者)

前同P24

このように、「人材確保」と「人材育成」を看板にした新たな制度の創設を打ち出しました。

その新たな制度については、いくつかの方向性が示されています。その中でも注目されるのが、技能実習制度では例外的な措置とされている「転籍」について、「人材育成そのものを制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残しつつも、・・・従来よりも転籍制限を緩和する方向で検討すべき」とされました。そして、①人材育成に要する期間、②受入れ企業が負担する来日時のコスト、③安定的な人材確保、④我が国の労働法制との関係などを勘案して今後検討されることになりました。①や②をふまえると、一定期間の転籍制限は残存すると思われます。

また、管理団体の機能を「必要不可欠」としつつ、受け入れ企業の人権侵害行為を防止・是正できていない実態もふまえ、「受入れ企業等からの独立性・中立性の確保や、監理・保護・支援に関する要件を厳格化する方向で検討すべき」とされました。したがって、新制度においては、管理団体の許可要件が厳格化されると思われます。

さらに、技能実習機構についても、「適正な受入れに不可欠」と評価したうえで、引き続き活用する方向で検討すべきとされました。技能実習機構も、新制度に合わせた名称変更はするでしょうが、監督機関としての役割を担うことになりそうです。

技能実習制度では、実習生が入国前に多額の借金を負っていることも問題視されていました。この点の対策については取り組みを強化することは示されているものの、具体的なものはまだ明確ではないようです。また、日本語能力についても就労開始前の日本語能力の担保方策および就労開始後の日本語能力向上の仕組みなどが今後検討されることも示されました。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(法務省HP)