世界の労働基準監督署からVOL022:宮古労働基準監督署

令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関する通達(施行通達)とQ&Aが公表されました。今回は、Q&Aのうち、注目の内容のものを見ていくことにしましょう。

まず、新たな労働条件明示ルールの適用時期・対象者について、既に雇用されている労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要はないことが確認されたうえで(1-1)、施行前後に締結される労働契約については、「契約の始期が令和6年4月1日以降であっても、令和6年3月以前に契約の締結を行う場合には、改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要」とされました(1-2)。つまり、契約の締結を行う時点が施行日前か後かで判断することになります。

有期労働契約の更新上限の明示の記載方法については、「契約の当初から数えた回数を書くのか、残りの契約更新回数を書くのか」等について労使の認識が一致するような明示となっていれば差し支えないとしたうえで、「労働者・使用者間での混乱を避ける観点からは、契約の当初から数えた更新回数又は通算契約期間の上限を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示すことが考えられる」とされています(3-1)。残りの契約更新回数の記載は記載ミスを引き起こす可能性もあるため、厚労省の見解の通り契約の当初から数えた更新回数等が妥当と考えます。

ところで、今回厚生労働省が作成した労働条件通知書のモデルには、、「更新上限の有無(無・有(略))」という欄や「就業規則を確認できる場所や方法」の欄が追加されています。このうち、前者については、労基則5条1項1号の2で「上限の定めがある場合には」と条件付けられていますので、更新上限がない場合にその旨を明示することは要しないとされています(3-2)。また、後者については、今回の労基則の改正に基づくものではありません。したがって、削除しても法的に問題はありません。ただし、労契法では、就業規則の有効要件として「周知」がさだめられており、この「周知」は実質的な周知が必要とされていることをふまえると、労働条件通知書に就業規則の確認方法を記載しておくことは、あったほうがよいとと考えます。

今回公表されたQ&Aは内容は数も少なく、内容的にも不十分なもののように思われます。今後更新される可能性もあるので、引き続き注視しておく必要がありそうです。

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参考リンク

令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A(厚生労働省HP)