世界の年金事務所からvol009:松戸年金事務所

「年収の壁・支援強化パッケージ」のうちいわゆる「106万円の壁」への時限的な対応策として、短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給する「社会保険適用促進手当」を支給した場合には、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないとする制度が創設されました。

なお、この措置を含む「年収の壁・支援強化パッケージ」は、当面の措置としてまず導入されるものとされており、令和7年(2025年)に予定している次期年金制度改正に向けて、社会保障審議会年金部会において議論が行われています。

社会保険適用促進手当は、新たに社会保険の適用となった労働者であって、標準報酬月額が10.4万円以下の従業員が対象となります。支給対象者は「特定適用事業所」に勤務する短時間労働者に限られません。 また、事業所内での労働者間の公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で「同じ条件」で働く、既に社会保険が適用されている他の労働者にも「同水準」の手当を特例的に支給する場合には、同様に、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となります。

ここで「同じ条件」「同水準」とは、事業所内で既に社会保険が適用されている労働者については、当該労働者の標準報酬月額が10.4万円以下ことをいうものとされています。したがって、事業主が保険料負担を軽減するために支給した手当について、本人負担分の保険料相当額を上限として標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となります。

ちなみに、「10.4万円」とはどういう意味なのでしょうか。Q&Aでは、標準報酬月額11.0万円以上の方は年収が128万円以上となり、社会保険の保険料負担を考慮しても尚、手取り収入が106万円を超えることから、既に「106万円の壁」を越えており、壁を越える後押しをすることを目的とした今般の措置の対象としていないとされています。これは一見して何を言っているのかよくわからない部分ですが、要するに社会保険加入促進手当は手取りが減る分を補填するための手当ですので、手取り額が8.8万円を超えるような収入があるのであれば必要ないということと思われます。

ところで、事業所が特定適用事業所かどうかにかかわらず、社会保険(被用者保険)に新たに適用される労働者について、今回の措置の対象となる可能性があります。 また、事業所内で既に社会保険が適用されている労働者がいる場合には、当該労働者の標準報酬月額が10.4万円以下であれば、保険料負担を軽減するために支給した手当について、本人負担分の保険料相当額を上限として標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととすることが可能です。

ただし、社会保険の適用に伴い発生する本人負担分の社会保険料負担、すなわち健康保険・厚生年金保険・介護保険に係る本人負担分の保険料相当額が、標準報酬等の算定から除外できる上限額となります。

また、社会保険適用促進手当は、それぞれの労働者について、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定において考慮しないこととされます。

なお、社会保険適用促進手当は、あくまでも事業主が労働者に対し、労働者の保険料負担を軽減するために自らの判断で支給するもの、つまり創設するかどうかは事業主の任意です。ただし、社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外の利用に当たって、手当は、「社会保険適用促進手当」の名称を使用するよう「お願いします」とされています。

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参考リンク

年収の壁・支援強化パッケージ(厚生労働省HP)