世界のハローワークからVOL027:ハローワーク太田

厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が雇用保険制度の見直しの方向性について、労働政策審議会職業安定分科会に報告しました。そこで、今回は報告書にもとづいて、次の法改正の動向についてみていくことにしましょう。

1 雇用保険制度の適用拡大

これは新聞等でも報道され、話題になりました。現在、週の所定労働時間が20時間以上の雇用労働者を適用対象としている雇用保険制度について、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者にも適用するとするものです。施行時期は、事業主の準備期間等を勘案して、2028(令和10)年度中とすべきとされました。

新たに適用拡大により被保険者となる者は、適用要件を満たした場合、現行の被保険者と同様に、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象とすることとし、給付水準も同じ考え方に基づき設定すべきとされています。

適用範囲の拡大後の基本手当の支給等に関する基準等については、基本的には現行の取扱いとその考え方を維持するとされています。すなわち、従来の週の所定労働時間が20時間以上という適用基準が、その半分の10時間以上となることを踏まえて、以下のとおり、必要な見直しを行うものとされています。

第1に、被保険者期間の算定基準 基本手当をはじめとする失業等給付の受給資格の判定の基礎となる被保険者期間については、現行のとおり、離職日から2年間に被保険者期間が12箇月以上(特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、1年間に6箇月以上)とすべきとされました。その上で、1箇月として被保険者期間に算入されるための基準について、現行の「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある場合」を、「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が6日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が40時間以上ある場合」へと見直すべきとされています。

第2に、失業認定基準および自己の労働により収入がある場合の取扱いについてです。失業認定のとき、現在は、その日の労働時間が4時間(週20時間相当)以上であるか否かを基準として、原則として、労働した日のうち、労働時間が4時間以上の日については失業認定を行わず、4時間未満の日については、自己の労働によって得た収入額に応じて減額した上で基本手当を支給することとしています。これを、適用範囲の拡大に併せ、失業認定の基準となる労働時間を、1日当たり2時間(週10時間相当)とすべきとされました。そして2時間未満の労働で得られる収入は一般的には少額であることも踏まえ、簡素化等の観点からこれを廃止すべきとされました。

第3に、賃金日額の下限額も、適用範囲の拡大の施行に合わせて、変更するものとされました。

なお、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用については、令和4年1月から、65歳以上の労働者を対象に、2つの事業所での週所定労働時間がそれぞれ20時間未満であって合算して20時間以上となる場合に本人の申出を起点として雇用保険を適用する仕組みが設けられています。この制度については、給付の支給状況等この仕組みの実施状況の把握と検証を行い、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用の在り方等について引き続き検討すべきとされました。

2 基本手当について

第1に、自己都合離職者の給付制限期間等については、転職を試みる労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、令和7年度から、1箇月へと短縮すべきとされました。ただし、現行の5年間で3回以上の正当な理由のない自己都合離職の場合には給付制限期間を3箇月とする取扱いは維持すべきとされました。

また、離職期間中や、離職日から遡って一年の期間内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、令和7年度から、給付制限を解除して基本手当を受けられることとすべきとされました。

第2に、リーマンショック時に講じられた措置に端を発する、雇止めによる離職者について所定給付日数を特定受給資格者並みの水準とする措置等と、雇用情勢が悪い地域に居住し、かつ、重点的に再就職の支援が必要であると公共職業安定所長が認めた特定受給資格者等に対する所定給付日数を延長する措置(地域延長給付)は、いずれも時限の暫定措置とされており、累次の延長を経て現在は令和6年度末までの措置とされています。

このうち、雇止めによる離職者について所定給付日数を特定受給資格者並みの水準とする措置等については、令和7年度から2年間延長すべきとされました。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会報告(厚生労働省HP)