労働者派遣法の改正について建議が公表〜派遣期間制限の仕組みが見直し〜
※画像は記事内容と関係ありません。 |
厚生労働省は、労働政策審議会が厚生労働大臣に対して建議した「労働者派遣制度の改正について(報告書)」を公表しました。厚生労働省は、この建議の内容を踏まえ、平成26年通常国会への法案提出に向け、法案要綱を作成する予定です。
そこで、今回は、報告書に示された新しい期間制限についてみることにしましょう。なお、そのほかの部分については、来週にも改めてニュースで取り上げる予定です。
■「労働者派遣制度の改正について」期間制限のポイント 1.専門26業務について
2.個人単位の期間制限について 3.派遣先における期間制限について 4.期間制限と常用代替申し措置の特例について
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今回の改正は「わかりやすい制度とすることが求められている」とされている割に、報告書は決してわかりやすくないところが最大のポイントです(笑)。冗談はさておいて、今回最も注目されるのは、有期派遣労働者の派遣期間の制限の仕組みを見直し、新たに個人単位と派遣先(事業所)単位の2つの期間制限を設けるとしています。
そこで、まず現行の派遣期間の制限について確認しておきましょう。労働者派遣法40条の2では、「派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務…について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない」とされています。つまり、現在は、「就業の場所ごとの同一の業務」が派遣期間の制限の単位となっています。
しかし、今回の報告書では、有期派遣労働者の期間制限が「個人単位」と「事業所単位」の2本立てとなりました。まず、「個人単位」での期間制限は、「同一の組織単位において3年を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れてはならない」とされています。ここで注意が必要なのは、「個人単位」とは言いながら、「同一の組織単位」という枠が存在していることです。この点について、審議会で示された資料の例によれば、人事課で派遣労働者を受け入れるのは3年が上限となりますが、同じ派遣労働者を経理課に異動させれば、引き続き労働者派遣を受け入れることが可能となる仕組みのようです。
そして、もう一つの軸として、「事業所単位」でも期間制限が設けられることが提案されました。それが上記3.の内容で、同一事業所内での派遣労働者の受け入れは3年を超えてはならないことを原則として、過半数代表者の意見を聴取することを条件に、さらに3年間派遣労働者を受け入れることができるとしています(意見聴取をしなかった場合、「労働契約申込みなし制度」の適用の対象となることは、2.と同様)。したがって、事実上期間制限がなく派遣労働者を引き受けることが可能となり、この点が、労働者委員の反発を呼んだものと考えられます。
このように、報告書では、期間制限の仕組みが大きく変更することが提案されました。これらの改正は、平成27年10月1日施行される「労働契約申込みみなし制度」を円滑に導入するため、期間制限の仕組みを整理したものと考えられます。しかし、派遣期間の考え方が変更されれば現場での混乱も予想されるため、十分な説明と経過措置が実施されることが望まれます。
■関連リンク
労働政策審議会建議
−労働者派遣制度の改正について−(厚生労働省HP)